アラスカの生態系 なぜサケが森を育てるのか?【地理×生物 ゆっくり解説】
アラスカと聞くと、氷と雪、オーロラを思い浮かべます。実際に、内陸ではマイナス62度が記録され、北の町では冬に65日も太陽が昇りません。ところが、そのアラスカの南の海沿いには、世界最大の温帯雨林が広がっています。
雨が多ければ、木はよく育ちそうに思えます。けれど、雨は土の栄養を溶かして川へ流し、海へ運んでしまいます。しかも植物のほとんどは、空気の大半を占める窒素を、そのままでは使えません。栄養は下へ流れる一方で、自分から山へ登ることはありません。
では、その流れに逆らうものはいるのでしょうか。海で太り、生まれた川を上って一生を終えるサケ。多い日には1日に40匹を食べ、食べ残しを森へ運ぶヒグマ。冬の川に4000羽近く集まるハクトウワシ。そして、サケを数えるための作業が、20年がかりの実験になってしまった研究者たち。
なぜ太平洋のサケは、卵を産んだあと海へ帰らないのか。氷河が消えたばかりの岩の土地に、森はどうやってできるのか。日本の知床の森は、この話とどうつながっているのか。
豊かな森は、森の中だけでは完結していません。
■ 主な参考文献
Helfield, J. M. & Naiman, R. J. (2001) Effects of salmon-derived nitrogen on riparian forest growth and implications for stream productivity. Ecology 82: 2403-2409.
Helfield, J. M. & Naiman, R. J. (2002) Salmon and alder as nitrogen sources to riparian forests in a boreal Alaskan watershed. Oecologia 133: 573-582.
Hilderbrand, G. V. et al. (1999) Role of brown bears in the flow of marine nitrogen into a terrestrial ecosystem. Oecologia 121: 546-550.
Gende, S. M., Quinn, T. P. & Willson, M. F. (2001) Consumption choice by bears feeding on salmon. Oecologia 127: 372-382.
Quinn, T. P. et al. (2009) Transportation of Pacific salmon carcasses from streams to riparian forests by bears. Canadian Journal of Zoology.
Quinn, T. P. et al. (2018) A multidecade experiment shows that fertilization by salmon carcasses enhanced tree growth in the riparian zone. Ecology.
LeBauer, D. S. & Treseder, K. K. (2008) Nitrogen limitation of net primary productivity in terrestrial ecosystems is globally distributed. Ecology 89: 371-379.
Crossin, G. T. et al. (2004) Journal of Fish Biology 65: 788-810.
Rinella, D. J. et al. (2012) Spawning salmon and the fitness of stream-dwelling fishes. Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences 69: 73-84.
Matsubayashi, J. et al. (2014) Using stable isotopes to understand the feeding ecology of the Hokkaido brown bear in Japan. Ursus 25(2): 87-97.
■ 補足(議論が続いている点)
・木の葉の窒素のうち、どれだけがサケから来たかは、サケの体に多い「重い窒素」の割合から計算しています。ただし、土の中でこの割合がずれるため、海から来た分を大きく見積もりすぎる恐れも指摘されています。
・サケを片側の岸に置き続けた20年の記録では、サケを置いた側の木は育つ速さと葉の窒素が増えていましたが、木の高さは目立って変わっていませんでした。もともと成長の遅い木だったためです。
・サケが育てた森が次の世代のサケを育てる、という循環は、研究者が立てている仮説です。この恩恵を受けるのは、川でしばらく育つギンザケなどの子どもで、生まれてすぐ海へ下るシロザケの子どもは当てはまりません。
・ハクトウワシが運ぶサケが、森の栄養にどれだけ効いているかは、まだ研究の途中です。
・氷河のあとの土地が、地衣類やチョウノスケソウの仲間、ハンノキの茂みを経てトウヒの森になる流れは、よくある例です。実際には、場所によって道筋がいくつもあったことが分かっています。
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※この動画は東方Projectの二次創作です。
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